印刷技術がヨーロッパで発達していた頃、日本では浮世絵に代表されるカラー印刷が行われていました。
世界中にコレクターが居る、江戸時代のブロマイド「浮世絵」。
その「浮世絵」の印刷方法を見て行きましょう。

コレクターが集めているのは「版画」


浮世絵には、大きく分けて1枚ものの肉筆浮世絵と、木版画による浮世絵版画とがあります。
基本的に浮世絵は後者の版画の事を言います。

たとえば美術書などでよく目にする北斎の赤富士(富嶽三十六景 凱風快晴)や、写楽の役者絵、広重の東海道五十三次など、どれも本物(オリジナル)は世界に1枚しかない、と誤解されている場合があります。
しかし実際にはこれらはすべて版画ですので、「本物」は江戸時代に複数刷られていて、世界のあちこちの美術館やコレクターの手元にあるものは、この版画です。
どれも「本物」です。肉筆画以外の浮世絵は、本物が複数あるわけです。 

浮世絵の印刷方法

浮世絵は版画です。版画の要領で刷ります。

下絵を描く

下絵のとおりに版木を彫る

絵の具をつけて紙に摺る

完 成

このように、単純な過程となります。

しかし、浮世絵の場合、この「下絵を描く」、「版木を彫る」、「紙に摺る」という3つのプロセスが、それぞれ専門職として分業化されています。
各プロセスごとに、「絵を描く専門家」、「版木を彫る専門家」、「紙に摺る専門家」がいて、それぞれ順に絵師、彫り師、摺り師と呼ばれています。

現在の出版社の役割だった「版元」

絵師は、版元(出版社)からの依頼により、下絵を描きます。この場合、絵師に題材を企画する権限があるわけではなく、版元が企画し絵師を選び、絵師にどのような絵がほしいのかを伝え、描いてもらいます。

描き方にも細かいルールがあって、たとえば役者絵で3人横並びの絵を描く場合、「主役は必ず真ん中に配置しなければならない」といった具合に、その役者の格や歌舞伎の演目内容に応じて、人物の配置から描く大きさ、着物の柄まで、きちんとルールに則って描き分けなければなりませんでした。

逆に、絵を見る側はこのルールを理解しているので、その歌舞伎の配役から役者同士の力関係まで、1枚の絵からかなりの情報を読み取ることができるわけです。

絵師の下絵が出来ると、次は彫り師が下絵の線に忠実に版木を彫っていきます。
ただし、彫りの場合は版木が(色数に応じて)複数枚必要なこともあって、通常は一人で行うのではなく、何人かで分担して作業にあたります。
役者の顔や、装飾品、着物の細かい柄などは熟練した彫師が担当しました。
その担当が、若い職人に仕事を割り振りました。
大工の棟梁と若い衆のような関係性で、仕事を行っていました。

版木が仕上がると、いよいよ印刷です。この工程は摺り師が行います。
これもただ版木に色を乗せて紙に摺ればいいという、工作の時間に行った版画とは違います。かなりの熟練が要求される分野で、浮世絵独特の「ぼかし」の技法などは専門技術のひとつです。
顔料の乗せ方と微妙な摺り加減だけで見事なぼかしのグラデーションをつけているのです。

浮世絵はカラーの多色刷り印刷です。
摺る色ごとに版を変えて、一色ずつ重ね摺りしていきます。
このとき、版ずれさせることなく、各色を寸分のズレもなくピタリと位置を合わせ、絵をまるで肉筆のように完成させることは、摺り師の腕一つが行うことでした。日本独特の、見事な職人技です。

【まとめ】

こう見ていくと、絵師は請負仕事の部分が大きく、浮世絵といえば絵師の存在が大きいわけなのですが、実際は多くの職人技の集大成です。

この繊細な技術が、現在の印刷技術につながっています。
昭和に行われた印刷での版下職人などは、浮世絵の技術から繋がるものがあります。
日本の印刷技術は、世界でも最高水準です。その技術は江戸の頃から培われてきたものなのです。

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